Book review №1| 悲しい本

とてつもなく悲しいことにどう折り合いをつけることができるか。これは人が生きていくうえでとても大切なことのように思える。しかし、ぼくはそれが大切だと頭でわかっていても、カプセルに放り込んでぐいと丸呑みしてしまうようなことをしてきた。折り合いをつけることを放棄してきたのだ。もちろん完全になかったことにはできない。ことあるごとに、あるいは何の前触れもなく唐突に、栓の緩んだ水道みたいにぽたぽたと聞こえてきて、その存在を主張してくる……。悲しみとどう向き合うか、それがこの本のテーマだ。主人公は七転八倒しながら、孤独に誠実に、想像を絶する悲しみに向き合う。「それはぼくだけのものだから」、そんな捉え方があったのかと、すとんと目から鱗が落ちた。この本のおかげ。たぶんぼくはこれまでのようにそれがなかったかのようにすることはもうないと思います。翻訳は谷川俊太郎。(アカホシ)


『悲しい本』
作/マイケル・ローゼン
絵/クェンティン・ブレイク

(出版社:あかね書房)